慈愛会の会長として、私が一貫して言っているのが「患者さんの目から見て日本一の病院・施設」という目標です。規模や設備で日本一を目指すのではなく、患者さん、来院された皆さんに「こんなにすばらしい病院・施設はほかにない」「本当にこの病院に来てよかった」と心から思っていただきたい。そういう評価を頂ける病院・施設であれば、それが「患者さんの目から見たら日本一」の病院であり施設である、と思います。
その実現のために一番大事なのは、患者さんの視点でものを見、ものを考えるという習慣です。職員の心掛けや業務に対する姿勢といったソフト面が大きな意味を持ちますから、仮にハード面が不十分であっても「患者さんの目から見て日本一」となることは可能なのです。
慈愛会の新しい病院「今村総合病院」がいよいよ今年6月にオープンします。新病院が完成するとハード面でかなりの好条件が整います。今まではソフト面重視で「患者さんの目から見て日本一の病院に」と職員の皆さんに呼び掛けてきました。そこにハード面のバックアップが加わって、「今村総合病院」ではさらに患者さんの満足度が大きくなるのでは、と期待しています。
私が新病院建設の流れに関してとても感動していることをお話しします。
まず、職員が各部署、各委員会単位でプロジェクトチームを組んで、33のチーム体制で新しい病院づくりを進めてきたこと。これは本当に素晴らしい。自分たちの手で、いかにしていい病院をつくっていくか、具体的に考え、動いています。職員の熱意がそれぞれのチームの取り組みに表れていますね。活動内容を聞くにつれ、これならきっといい病院になる、と確信しました。
それともう一つ、今村理事長の采配のもと、今村病院、今村病院分院の両院長をはじめ職員が一致団結して、病院機能の分化・統合を推し進めてきた姿にも感動します。例えば、新病院着工にかなり先立って、今村病院外科部門の本隊が分院に移動して、分院に外科系の強みを加え、分院は手術室を増やし、運用をしっかりと軌道に乗せて、フル回転の状態で新病院稼働に移行できる体制を整えました。先を読んで進化を遂げる、その流れが見事です。建設の過程で随分と困難もあったと聞いていますが、職員みんなが心を砕いて、一つひとつ乗り越えてきました。
そういうことができるのも、慈愛会グループのすごさと強みですね。スタッフの心、一人ひとりの慈愛会マインド、それが新病院建設を着実に前進させたと思います。
今村病院分院は、臨床に関しては鹿児島の中で大学病院に決して引けを取らない体制をつくりあげていると思います。病院が誇る強みです。救急総合内科にしても脳卒中センターにしても血液グループにしても、すべての専門グループがとても高いレベルにあります。精神科病棟も持っていて、合併症のある精神科患者さんの入院治療ができる、鹿児島県内では数少ない存在です。
その強みを生かしながら、新しい「今村総合病院」は、単純な急性期病院でなく地域に根差した病院を目指します。今村理事長は新病院の位置付けについて、高度な先進医療を提供する鹿児島大学病院や鹿児島市立病院と闘うのでなく、それらの病院群に次ぐ第3の勢力といいますか、地域を支える役割、地域になくてはならない存在に、という構想を持っています。これまで以上に地域連携が重要になります。
私は、慈愛会グループという後ろ盾がそれを可能にする、と考えます。病院単体、慈愛会全体を合わせて、専門医療、介護、福祉、と様々な分野があり、地域とのコミュニケーションがとれる体制を持っています。地域のいろいろな医療機関が「何かあったらここにお願いすれば解決してくれる」と安心感を持ってくださることが、新病院の大きな強みとなります。既に期待の声もたくさん耳にしています。地域を巻き込んだ形での第3の勢力という構想が、非常に高い評価を受けているようです。ぜひ実現を、と思います。
高い評価を受けていることがもう一つ、今村病院分院の初期研修プログラム「錦江湾プログラム」です。平成29年度は10名の募集に対して22名の応募がありました。優秀な精鋭が集まってくれて、フルマッチして、今年の新病院オープン直前にプログラムに参画するわけですから、研修管理委員長の立場としてもそれは非常に嬉しいことです。病院を挙げて研修医を一人前に育てようという熱意、取り組み姿勢が評価された、というのが私の実感。指導医の先生方の熱心さが学生に伝わって、22名の応募という実績につながったと思います。さきほども話しましたが、大学に引けを取らない臨床のレベルの指導医がずらりとそろって、また、各科に優秀な先生が大学から次々に派遣されていることも、学生にとって大きな魅力なのだろうと思います。
新病院の完成がもう間近。それはもう楽しみです。自分たちの病院をすばらしい病院にしたい、という職員の想いが、必ず病院の高い評価につながると思います。これまでの熱意と取り組みを、新しい病院ができたとき更に花開かせてほしいですね。
患者さんの視点を大切に、全職員が力を合わせてこの病院を「日本一の病院」に仕上げてほしいと思います。