リレーインタビュー【保存版】

【第1回】慈愛会 今村英仁理事長

2022.11.11

“王道を歩む”経営を

― 慈愛会第3代理事長に就任し10年が経ちました。振り返っての所感をお聞かせください。

私が内分泌内科の一医師として慈愛会に入職したのは平成4年。当時、今村病院は開業以来という赤字転落の苦しい時期でした。でも私には経営のイロハなど何も分かりません。今村病院内科で患者様を受け持つ傍ら、慈愛会に「企画部」を新設して自ら就任し、医業経営にも本腰を入れるようになりました。 理事長就任までの約10年間は、父である今村一英・先代理事長と二人三脚で既存病院の建て替え、老人保健施設の新設などを進めました。先代のリーダーシップと、今村病院院長だった野村秀洋先生(現名誉院長)の支えがあったからこそ、失敗を乗り越え、いま理事長職を務めることができています。 これまでは過去の延長で事業を進められました。しかし今後、社会保障制度改革についていくためには真の力量が問われます。これから先が理事長としての正念場だと考えます。


― 医業経営者としてのポリシー、心の拠り所などあれば。

稲盛和夫氏(京セラ名誉会長)の講演を聴き、私にとっての医業経営の“軸”が形成されました。大切なのは「王道を歩む」こと、つまり堅実、まじめが生き残る道である、と。人は近道を選んだり要領の良さを求めたりしがちだが、そうでなく、人として正しい道を一歩一歩、進んでいくことが大事、と心に刻みました。聴講を機に、同氏の著書「心を高める、経営を伸ばす」(PHP研究所、1989年初版発行)と出合い、王道を歩むことの大切さ、それこそが慈愛会が永続してきた理由なのだ、と胸にすとんと落ちました。


―「慈愛会の一番の財産は職員である」と公言する今村理事長。2200余人の誇れる「宝」をいかに大切にするか、具体的な方策は何でしょうか。

本業にしっかりと取り組むことが、ご利用者の満足につながり、ひいてはスタッフの物心両面の幸せにつながります。働きたいと思う間はいつまでも働いてもらいたいし、働ける環境をつくりたい。具体的には、出産祝い金や子育て環境の充実化など、育児のバックアップやサポートをさらに進めます。最近、離職率の悪化に歯止めがかかってきました。病院の方向性を理解してもらえた成果だと思います。今後も理解してもらえるよう努力を続けます。


―2014年に創設80周年記念行事を成功裏に終えました。

行事を通して感じたことが2つあります。一つはスタッフが地域の方々と仲良く仕事し、日頃から付き合いがしっかりできていること。通り一遍の関係でなく、我々が思っている以上に地域の皆さんの慈愛会への期待は大きいと感じました。 もう一つは、まじめで優秀なスタッフに恵まれていること。行事開催に際し、職員が一丸となってよく考え動いてくれました。 医療業界を取り巻く環境は今までも過酷でしたが、社会保障制度改革や、少子高齢化が一段と進む中、要求は高まる一方で、従前のやり方では生き残れません。80周年を機に醸成された慈愛会職員の一体感、コミュニケーションを維持・促進していかなくては、と強く思います。記念行事は、慈愛会の次へのステップに向けてマイルストーンとなりました。社会保障制度改革に対処しうる組織になれたと確信します。


―次のステップに向けての抱負をお聞かせください。

今のご利用者に引き続き利用していただける、役に立つ存在でありたいと思います。そのためには、医療制度の変化に則って、絶えず機能改善、自己変革を図っていかなくてはなりません。いまある慈愛会は80年かけて作り上げられました。この環境を次の世代にしっかりとバトンタッチすることが私の役割です。


―座右の銘はありますか。

強いて挙げるとすれば、祖父(慈愛会創設者・今村源一郎初代理事長)が折に触れ口にした「人生行路は汗と感謝で」の言葉。本当にたくさんの人に助けられ、支えてもらったおかげで、ここまでこられたという実感がこもっていたと思います。私自身も失敗を重ね、そのたび皆さんに助けられました。「人生行路は汗と感謝で」の教えを常に胸に抱いています。