先輩看護師の声

  • 2023年06月01日

    先輩看護師の声をお届けします

     

    6月

     

     

    患者さんからの嬉しかった一言

    奄美病院 Iさん                                 

    入職2年目の看護師です。私の看護体験をお話したいと思います。
    私の働いている精神科急性期治療病棟では、10代~80代の幅広い年齢層の患者さんが入院しています。一人の患者さんは、入院当初不安感が強く幻覚におびえて何度も「怖い怖い」と訴えており、意思疎通をとることも難しい状態でした。しかし、治療をしていくうちにだんだんと他の患者さんとコミュニケーションがとれるようになり、入院時とはまるで別人のような笑顔で、手を振り退院されました。その姿を見て、精神科医療の大切さを改めて学ぶことができました。また、うつ病で不安症状がある患者さんとの関わりでは、不眠や不安症状が続き、薬を服用する事にも不安を訴えていました。看護者には、不安の原因となる気持ちを表出する事はなかった為、勤務の時は担当ではなくても、常に患者さんのもとへ行き挨拶をしたり、眠れないことに対しての思いを聞いたりしていました。ある時、私が休み明けで出勤した時に「待っていたよー話を聞いてもらいたくて」と声を掛けてくださいました。「いつも話を聞いてくれてありがとうね」と言われ、その患者さんにとって安心して話ができる存在になれたと感じた瞬間でした。患者さんとのかかわり方はお一人おひとり違う為、看護していく中で「これで良かったのかな」と不安になることも多く、振り返る事がたくさんあります。その中で、この患者さんからの言葉はとても嬉しい気持ちで一杯になり、自信にも繋がりました。これからも、一人ひとりの患者さんに寄り添える看護師に、成長していきたいと思います。




     

    患者様にとって心地良い環境とは ~A氏との関わりで学んだこと~

    いづろ今村病院 Mさん
    いづろ今村病院緩和ケア病棟に配属され、様々な気持ちや身体症状を抱えながら過ごされている患者様やご家族と関わる中で、看護に答えや正解がないことを日々感じながら過ごしています。分からないことや悩むことが沢山ありますが、先輩をはじめ多職種の方々へ相談し、「患者様・ご家族に望ましい選択とは。どのように最期の時を過ごしたいか、どのような支援が必要か」を考えるとともに、患者様やご家族を通して多くのことを学ばせて頂いています。
    看護師1年目の秋に出会った肺癌の患者様A氏は、病状の進行に伴い次第に寝たきりとなり寝返りも自分では出来ない状態で、褥瘡リスクが高くなっていました。A氏からも「ベッドが少し硬い」という発言があり、エアマットに変更したら軟らかいベッドで心地よく過ごせ、褥瘡予防が出来るのではと考え、エアマットの導入を行いました。しかし、数日後に夜勤者や理学療法士より、A氏から「マットが合わなくて辛い」「マットが軟らかすぎて身体が動かしづらい」「夜も眠れない」との訴えがあったと聞きました。A氏に会いに行くと、表情は険しく同じ訴えがありました。A氏の身体面から見ると褥瘡のリスクは非常に高く、褥瘡が形成されてしまうと創部の疼痛や感染のリスクが考えられ、さらなる苦痛を生じてしまう可能性がありました。しかし、こんなにも心身の苦痛を訴えられ、本来の目的である「心地よく穏やかに過ごす」ことが出来ておらず、自分が行ったケアにより新たな苦痛を感じさせてしまったことに、ショックと申し訳なさを感じました。マットを元に戻してあげたい、褥瘡予防の観点からエアマットは必要なのか、A氏にとって良い選択とは?と葛藤を抱きました。そこで理学療法士や先輩看護師、介護福祉士に相談しました。今の状況は褥瘡リスクが高く、エアマットが望ましい。しかし、緩和ケア病棟でありA氏とって何が一番大切なのか、今一番大きな苦痛はなんだと思う?とアドバイスを受けました。エアマットに限らず、背抜きや体位変換による除圧でも褥瘡予防は出来ます。様々な助言のもと、元のマットに戻すことを決めました。A氏に褥瘡の可能性とエアマット以外の予防法を説明し、マットを戻すか再度確認すると「お願いします」と返事がありました。その後、「よく眠れるようになった」「今のマットがいい」と表情も穏やかになり、笑顔が見られはじめました。マットの心地よさはどうかと毎日気にかけるようになったのがきっかけとなったのか、A氏から、家族のことや自宅での生活のこと、自宅で家族と過ごし最期を迎えたいなど、今まで聴けなかった気持ちを表出され、私はその度に傾聴していました。お話しをしてくださるようになり、嬉しかった気持ちを覚えています。
    入院生活は非日常的なものですが、患者様にはそこが生活の場となります。患者様が少しでも心地よく穏やかに過ごせるように環境を調整することの大切さ、その環境が心地よいかどうかは患者様自身にしか分からないことであり、だからこそ評価が大切であることを改めて学ぶ出会いとなりました。
    これからも、看護師の仕事をする中で基本的なことではありますが、処置やケアを行う前には必ず説明や声かけを行い、患者様の表情や言葉などの反応を観察すること、そこに患者様の気持ちがあることをこれからも忘れずに行いたいと思っています。
    また、患者様は恐怖心や痛みを伴う処置でも必要な処置ならと頑張ってくださいます。手を握ったり、体に触れたり、声をかける、それだけでも患者様の気持ちは違うと思います。そして、環境調整はもちろん、自分自身が患者様にとって環境の一部であることを忘れず、患者様に安心と心地よさを感じてもらえるような看護師になりたいと思っています。
    「医療の原点は、慈愛にあり」
    慈愛会の医療理念となっている、「慈しみ、愛する心、その素朴で純粋な気持ち」を大切に、患者様ひとりひとりの気持ちを大切にしながら心と心をつなぐ看護ができる看護師を、一緒に目指してみませんか。

     



     

    聞く力

    谷山病院 Yさん
    私は入職して3年目になります。現在精神科一般病棟で勤務しています。
    看護学校での病院実習が精神科看護師を目指すきっかけとなりました。正直急性期病院で処置や注射をどんどんこなす看護師に憧れやかっこよさも感じていました。しかし、精神看護学実習では、人と関わることの意味を感じたことが進路に大きく影響しました。そして、どの病棟でも学生の言葉や発表に手を止めて学生をみて聞いてくれる精神科看護師の姿に「ここで働いてみたい」と思うようになりました。

     実際働いてみてギャップも多くありました。私は社会人1年目でもあり、社会人としてのマナーや礼儀を家族のように教えて頂きました。臨床では実習と違い、行動制限のある方や不安の訴えや興奮に私が対応出来ない不甲斐なさとストレスに押しつぶされそうな時期もありました。看護ケアや業務に慣れていくのに時間がかかったかもしれません。しかし同期から沢山の力や励ましをもらいました。

     そんな中でも私にできることを探しました。恩師の言葉「精神科看護はあなたが治療の道具となる」その言葉の意味を考えました。世間話や愚痴でも話せる存在になろう。「話を聞く」それは簡単なようで難しくもありました。頷くタイミング、目の表情、声のトーン全てにおいて患者さんの「ありがとう聞いてくれて」に至るまで時間もかかりました。
    聞いてくれる看護師になることでケアがスタートできる気がしています。

     しかし、私が今思うことは、精神科問わず看護師にとって「聞く力」は自分の心の出し方や見え方が解り大事な事だと思っています。
    人対人、関わることの大切さを日々精神科看護師として感じながら、次のステップに向けて日々ケアを進めています。
     


     

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